携帯電話・スマートフォンで繰り広げてきた各社の料金・サービス競争。割安な基本プランや割引プラン、家族割引や学生割引など、各社は様々な形で携帯電話・スマートフォンをお得に使えるプランを打ち出して契約者獲得を進めているが、今年に入って注目されているのが「自宅の通信回線とスマートフォンのセット割引」というものだ。
このプランは、携帯電話会社が指定する自宅向けインターネット通信回線を利用すると、スマートフォンの料金から一定の料金を割り引くというもので、ついに通信料金は自宅・スマホをトータルで考え、コスト削減が実現できる時代に突入したことになる。
最初にこのコンセプトのサービスを打ち出したのが、MNP利用数で5ヶ月連続1位と好調の KDDI だ。3月1日に開始した「au スマートバリュー」は、KDDI の「au ひかり」、ケイ・オプティコムの「eo 光」など家庭向け光ブロードバンド回線の利用世帯やケーブルテレビ「J:COM」「JCN」系列でインターネットサービスを利用している世帯が対象。対象となる固定通信サービスに加入すると、世帯内の au スマートフォン利用者の利用料金から毎月1,480円(3年目以降980円)を割り引く。例えば、一家全員が au スマートフォン利用者の場合は、毎月5,920円が割り引かれる計算だ。
一方、追従する形でサービスをスタートさせたのが、純増数1位を維持するソフトバンクモバイルの「スマホ BB 割」だ。こちらは Yahoo!BB の利用プラン「ホワイト BB」の利用世帯やソフトバンクテレコムと提携しているケーブルテレビのインターネット利用世帯が対象。対象サービスに加入すると Android スマートフォンで1,480円(3年目以降980円)、iPhone で430円(2年限定)が割引となる。
ちなみに、NTT グループ(NTT 東西と NTT ドコモ)についてはスマートフォンとのセット割引は現在のところまだ展開していない。
「自宅の通信回線とスマートフォンのセット割引」という新しい料金割引について、先陣を切った KDDI の「au スマートバリュー」と、追従したソフトバンクの「スマホ BB 割」だが、ソフトバンクの割引プランには課題も多いのが現状だ。
ひとつが両社の通信回線の違いとサービスの対象世帯数だ。最大1Gbps のスピードを誇る「auひかり」をはじめとする光ブロードバンド回線を主な対象としている「au スマートバリュー」に対して、「スマホ BB 割」の主な対象は50Mbps の ADSL 回線。近年、KDDI と NTT 東西で激しい光回線シェア争いを繰り広げる中で、ADSL 回線は既に”過去のもの”になりつつあり、消費者にとって魅力的に感じられるかは疑問が残る。また、この影響かサービスの対象世帯数も「au スマートバリュー」の約1040万世帯に対して「スマホ BB 割」は約150万世帯と大きな開きがあるのが現状だ。
そしてもうひとつが、スマートフォンに対する割引方法の違いだ。「au スマートバリュー」が OS の種類を問わず全てのスマートフォンに対して一律1,480円割り引くのに対して、「スマホ BB 割」では iPhone の割引額が430円と低く設定されている。また、どちらのサービスも2年経過すると割引額が低くなるシステム(両社とも1,480円→980円)だが、iPhone で「スマホ BB 割」を利用すると2年で割引が終了することになっている。この差が消費者にどう評価されるかが、両社のサービスの利用者数に影響するものと思われる。
加えて、「au スマートバリュー」が永年受け付ける割引プランとして開始しているのに対して、「スマホ BB 割」は5月31日までの期間限定キャンペーンである点も、中長期的に見てユーザーの利益になるのかを考える必要があるだろう。
当たり前の話だが、このような割引プランは利用者にとってシンプルでわかりやすく、かつ誰でも利用できるものであることが望ましい。その意味では、先陣を切った「au スマートバリュー」は通信回線の速さなど十分なクオリティをお得に使えるという価値を生み出し、わかりやすいシンプルなコンセプトで多くの対象世帯数にサービスを提案していると言える。今後このサービスに追従する他社は、このコンセプトを超える新たな価値の創出が求められるだろう。
http://japan.internet.com/allnet/20120323/4.html